目標管理制度(MBO)

目標管理制度は有効なマネジメント手法

目標管理制度は、社員に個別に何を達成させるのかを明確にし、目標設定から目標達成を通じて、社員の成長と評価に役立てるという組織マネジメントの1つの手法です。

目標管理と聞くと、「しんどい」、「きつい」というあまり良くないイメージを持つ人が多いのも事実であり、そのような人は以下のようなイメージを持っています。

  • 目標設定しても達成できたためしがない。
  • 目標=ノルマ。つらい。
  • 目標を考える時間が面倒臭い。
  • 形式上目標を考えるだけで実行できない。
  • 立てた目標も3日坊主で未達。目標を立てると余計に自信を無くす。
  • 目標なんかなくても今のままでいい。現状維持がいい。

 

​ただ、目標管理は本来、良いものです。このような研究事例があります。

ハーバード大学の研究で、教授が学生に目標について質問をし、卒業後の追跡調査をしたところ、在学中から「目標をもっていて、それを紙に書いている」と答えた人はその他の人と比較し、年収が10倍になっていた、という事例です。

目標を持ち、その目標達成に向けた行動をする、というプロセスは公私を問わず非常に有効なマネジメント手法となります。

個人目標と組織目標を一致させる

目標管理制度で重要な前提条件が、社員個人の目標と会社・組織の事業目標を一致させることがあります。

この前提条件ができない目標管理は以下どちらの場合も良い結果を生まないと言えます。

  • 組織目標だけになるパターン
    組織の目標を押し付けるだけになり、上司が勝手にノルマを設定すると、社員は「やらせれ感」のみが生じ、目標達成へのモチベーションがわかず、育成・成長にも繋がらないことになります。
  • 個人目標だけになるパターン
    社員の個人目標が全面にでてしまい、組織目標と一致しない目標は、組織としてそもそも達成したとしても評価はできません。結果として、その目標が達成されたとしても、組織目標達成には近づかず、本人の評価にも繋がらないため不適切な目標管理となってしまいます。

 

現状の日本では、どちらかというと、前者の組織目標だけになり単に目標を押し付ける、ノルマ管理制度として運用し、うまく効果が出ていない企業が多くなっています。そのため、組織目標を共有したうえで、社員が自分自身で目標を設定することが重要です。

目標設定のポイント・注意点

目標設定の前提条件がクリアできたとして、次に重要になるのが、どんな目標を設定するかです。

社員本人に目標を立ててもらう際の目標設定のポイントとしては、自分自身がこの会社・組織の中で「これからどうなりたいのか?」という願望を明確にすることです。

  • 〇年後、どういったポジションにいたいのか?
  • 収入はどうなっていたいのか?
  • どういう人になりたいのか?
  • どんな仕事をしたいのか?

曖昧な願望からは、曖昧な目標しかでてきません。どうなりたいかを明確にすること。これがまず重要になります。

次に以下のようなポイントを踏まえ、目標を設定してもらいます。

  • 今の自分に合った小さな目標から考える
  • 適切な現状把握をしたうえで目標を考える
  • 他人と比較せず、今の自分とこれからなりたい自分をもとに考える
  • 抽象的ではなく具体的な内容を考える
  • 可能な限り測定可能な内容を考える
  • 現状維持ではなくチャレンジングな内容を考える
  • 期限が明確に設定する

※管理部門など数値が出せない部署は測定ができない内容も多いため、数値ではなく具体的な行動・プロセスに焦点を当てることでも問題ありません。

マネージャー(管理職)のサポートが重要

人事制度全般にいえることですが、目標管理制度においても、運用し成果をだすためにはマネージャーのマネジメント力が必要になってきます。

年功序列制度のもとでの評価に比べ、目標管理制度では、評価者であるマネージャー(管理職)は目標の設定から進捗管理、期末の達成度の評価までサポートする必要が生じます。

結果としてマネージャーの負担が大きくなり、マネージャーのマネジメント力が不十分な組織・企業ではうまく運用ができない事態もしばしば発生します。

 

本来の目標管理制度の考え方は、マネージャーである上司が部下とコミュニケーションをとりながら、組織と社員個人の目標を近づけ、社員の働きがいを向上させるとともに人材を育成する仕組みです。

そのためにも、マネージャーのマネジメント力の向上は必須といえ、マネージャーは次のようない意識を持つ必要があります。

  • マネージャーの役目は部下を成功させること
  • 部下の成功はマネージャーの成功
  • 自分が頑張るだけでは組織の目標を達成することはできない(マネージャーがプレイヤーになってはいけない)
  • マネージャーは部下の成功を自身の願望にする

目標管理制度の実際の運用方法

最後に、目標管理制度の実際の運用について少し触れたいと思います。

目標管理制度の運用では、会社ごとに独自に「目標管理シート」を作成し、そのシートにそって目標設定~進捗管理~目標達成の確認・評価を行うのが一般的です。

社員が個別に設定した目標は、「目標管理シート」に書き出して、必要に応じて上司や管理部、経営陣と共有していきます。

目標管理シートでは、主に以下のような要素を組み込み作成していきます。

 

①現状の把握、現状の課題の書き出し

社員の自己評価による現状の課題、今後身に付けたい、伸ばしたい能力などを箇条書きにして書き出していきます。

 

②今期の目標設定

目標設定のポイントを踏まえ、極力測定可能、評価がしやすい具体的な数値目標と、実行したかどうかがわかる行動目標などを設定するといいでしょう。当然ながら、目標達成の期日も一緒に記入します。

 

③実行計画、プロセス、手順

期日から逆算して、立てた目標をどのように達成するかのプランを検討し記入します。進捗確認では立てたプロセスの実行状況をマネージャーが確認できるようにします。

 

④想定されるハードル

目標設定時点で既に想定される達成に向けてのハードルも考えておきます。また、そのハードルが顕在化したときには、どんな対応をとるのか?といった点まで考えておけば、軌道修正もしやすくなります。

 

 

いかがでしたでしょうか?

目標管理制度は社員の成長に非常に役立つ仕組みです。弊社ではコンピテンシーと絡めた目標管理制度を推奨しています。

目標管理制度を新たに導入したい、既に導入しているけれどなかなかうまく活用できていない、といったお悩みがある企業様はぜひ一度ご相談下さい。

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