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本日は、社会保険労務士の業務の中でも人事評価制度の導入と導入後の運用管理に力を入れられている、コントリビュート社会保険労務士法人の志戸岡代表にお話を伺います。
よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
人事評価制度の導入を検討している企業も多いと思います。さまざまなケースに携わられている志戸岡さんの目から見て、導入した方がいいタイミング、導入してもうまくいかないタイミングといったものはありますか?
はい。これは私が実際に様々な企業で導入してきて感じた肌感覚なのですが、業績がいいタイミングで導入する方がうまくいきます。逆に業績が悪くなっているタイミングではあまりうまくいきません。
なるほど。それは興味深いですね。業績と人事評価制度の導入には何か関連性や理由があるのですか?
はい。人事評価制度を導入したいと考える企業の多くは、評価基準をしっかりと作り、会社に貢献した人にその貢献度の大きさに応じて給与を決めたい、と思っています。
ここで、業績が好調、または堅調に推移しているタイミングであれば、利益もでており昇給や賞与の原資もありますので、その昇給原資、賞与原資をどのように分配するか、という話になります。
しかし、業績が悪化しており、利益がでていないタイミングでは、そもそも昇給原資・賞与原資がない(または不足している)状況です。
このタイミングで人事評価制度を導入すると、人事評価がよくても昇給ができない、賞与がだせない(または出せたとしても少額になってしまう)といった結果に陥ります。
または、人件費のコストカットをせざるを得ない状況になると、人事評価制度がコストカットやリストラの手段として使われることとなります。
社員からすると「面倒な人事評価制度ができて自分たちに不利益が生じた」と感じてしまいそうです。
そうなんです。こうなってしまうと、社内の雰囲気も悪くなり、社員にとって人事評価制度が「悪いもの」、「怖いもの」というイメージになってしまいます。
私の考えは、人事評価制度は社員を成長させるもの、です。そして、成長して、利益を出し、生産性を上げて、みんなで頑張って給与を含めた待遇を良くしていくためのツールだと思っています。
そういう観点では、やはり業績が好調で利益がしっかり出せているタイミングでこそ、導入した方がうまくいくと思います。
なるほど。
社員の方も頑張ったら給与があがる、という希望がもてるのがやはり大事ですね。
ちなみにですが、業績が好調の際に人事評価制度を導入すると、逆に社員優遇になりすぎる危険もあったりしませんか?
いい質問ですね。
この点は、業績好調の結果をどのように賃金に反映するかの匙加減でバランスをとっていく部分となります。
業績好調の要因についても考慮した方がいいです。例えば、その業績好調の要因が今後もある程度継続して見込めるのか、突発的なものかにもよります。
イレギュラーな好調の要因によるものであれば、月給への昇給よりも一時金(賞与)として還元をする割合を多くした方が人件費のコントロールはしやすいでしょう。
また、現在の自社の賃金水準が同業他社に比べて低いのか、高いのか、といった比較も重要になります。
採用面などの影響を考えると、賃金水準が低い場合は好調なタイミングでベースアップを含めた昇給を行い、社員へ還元をするべきです。
これらを踏まえて、どの程度月給を昇給するのか、賞与にどのように利益還元をしていくのか決めていくことになります。
「優遇になりすぎる」ことはないようにコントロールができる仕組み、制度設計にすれば問題はありません。
なるほど、参考になります。
さて、人事評価制度といえば「この制度を使って社員の給与を下げることはできないか」という、コストカットの道具として導入を検討される企業さんもいらっしゃると思います。
このあたり、実際はどうなのでしょうか?
結論から言えば、可能ですが、慎重な対応が必要です。
まず、今まで人事評価の結果で賃金を下げることがなかった会社や、新しく人事評価制度を導入する会社では、賃金が下がる可能性がある人事評価制度を導入する際に、就業規則の不利益変更の問題をクリアする必要があります。
不利益変更の問題?具体的にはどんな問題ですか?
はい。
これは、人事評価の結果として、賃金の減額が発生する可能性がある制度への変更を行う場合には、働く労働者にとっては、今までよりも不利なリスクのある条件になります。
そのため、条件が悪化する(可能性がある)制度への変更となるため、そういった就業規則/制度を導入するには、労働者から同意が必要になる、会社側が勝手に導入することはできない、という問題です。
なるほど。簡単に導入はできなさそうですね。この同意は、社員全員から個別にとる必要があるのですか?正直かなり面倒……というか難しい気がします。
おっしゃる通りです。
社員数が少ない場合は同意を得るのも比較的簡単ですが、社員数が増えれば増えるほど、全員から同意を得ることが難しくなります。大部分の社員は導入に賛成しても、一部の社員のみが反対するといった状況も想定されます。
このような場合は、賃金が下がる(可能性がある)制度の導入であっても、その制度の内容が適切に「社員に周知」され、「合理的なものである」場合は、社員との合意がなくとも行うことができるとされています。
これが、例外の対応ですね。基本的には全員から同意を得たうえで導入することをお勧めしています。
無事、制度の導入ができたら、人事評価の結果で給与を下げることはできるのですか?
制度の導入ができた場合は、降給は制限付きで可能、という答えになります。
例えば、全員から同意を得たからといっても、導入後の人事評価制度の運用が「公平かつ適切に運用されていない」場合は、裁量権・人事権を濫用しているとして降格や降給が違法となる可能性があります。
具体的にどんな場合が危ない運用になるのか教えていただいてもよろしいですか?
例えば、以下のような場合に人事評価制度自体が公正性・客観性が乏しく、違法の可能性があります。
ひとつめ、人事評価の、評価基準自体が抽象的な定めとなっており、評価者によって恣意的な運用が為される場合
ふたつめ、人事評価の手続きが不明確、不透明で社員にオープンにされていない場合
みっつめ、評価基準がそもそもオープンにされていない場合
当たり前といえば当たり前ですが、形式上同意をとったとしても、導入する人事制度の評価基準の中身がおかしなものであったり、運用がおかしくなると違法の可能性がでてきます。
このようなリスクがあるため、会社としては、人事評価の評価基準や評価の手続きといった制度の内容を明確にし、社員にオープンにすることが重要となります。
結局のところ、人事評価によって給与を下げることは「できないことはないが、慎重に行う必要がある」という答えとなります。
お話を聞くと、人事評価制度を用いて社員の給与を下げるのはかなり大変そうですね。
はい。
個人的には日本の現在の法制度では月給を下げるのはかなりハードルが高いですし、労働者本人にとっても、月給が下がることへの抵抗感は大きいです。
そういったことを考えると、人事評価が悪い場合は、昇給がない、つまり、現状維持になるということも1つの落としどころになるかと思います。
また、月給での降給がしにくいのであれば、賞与の出し方を変動制として、人事評価によって賞与の金額が変わるような仕組みを導入することも考えられます。
なるほど。月給だけではなく年収全体で考えるという仕組みですね。
はい。会社としては結局人件費は年収ベースで考えるべきものですので。
人事評価制度は導入するときだけではなく、導入後の運用も重要なことがよくわかりました。
そうですね。
なかなか自社だけでは法令上の注意点やリスクまではわからないので、自社だけで導入すると、知らず知らずのうちにリスクのある対応をしていることもあり得ます。
また、法令上の制限やリスクを気にするあまりに、経営者がやりたい制度が実現できないのも違った意味で問題です。
法令違反はもちろんいけませんが、リスクをゼロにすることはかなり難しいです。
リスクの中身をきちんと把握し理解したうえで、ある程度リスクを背負いコントロールする、という考えも必要だと思います。
そういった意味で、制度設計を制度導入のサポートをする際にも、経営者が正しい情報をもとに、判断ができるサポートをするのが弊社の役割だと考えています。
経営者、人事部の担当者としては非常に心強いですね。本日はありがとうございました。
ありがとうございました。
東京都千代田区のコントリビュート社会保険労務士法人のホームページにお越しいただき、ありがとうございます。当法人では中小企業の人事評価制度作成、改定、運用のサポートを実施しております。
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