採用ミスマッチを防ぐ人事評価制度の活用法|社労士が解説

採用選考のミスマッチ

  • 面接では良さそうだったのに、いざ入社してみると、社内のカルチャーに合わず、入社後数か月で退職してしまった
  • 採用選考、面接で慎重に見極めたはずの社員が成果が全く出せずローパフォーマーとなり問題社員となってしまった
  • そもそも採用選考で自社とのマッチングがあまり見抜けずに困っている
  • 採用のミスマッチを少しでも減らしたいがどうしていいか悩んでいる

求人媒体や紹介会社による採用選考にて採用を経験した会社では、一度はこのような採用のミスマッチを経験されたのではないでしょうか?

大企業、中小企業いずれにおいても、昔から採用のミスマッチはいたるところで発生しており、なかなかなくなりません。

面接の時には求める人材にバッチリはまった!と喜び採用したものの、入社後実際に働き始めると社内カルチャーに合わない、求めるスキルレベル不足といったことは起こり得ます。

このページでは、この採用選考のミスマッチを予防するという観点で人事評価制度を考えてみます。

採用選考のミスマッチとはどういう状況か?

人事評価制度を採用の場面で活かすことを考える前に、まずはミスマッチとはどういう状況かということから考えてみます。

採用でのミスマッチとは次のような状況が起こることです。

 

(会社側が感じるミスマッチ)

  • 履歴書の職務経歴と面接での話から推測した企業側が想像していた入社者のスキルレベルが思っていた水準ではなく不足していた。
  • 面接での話から会社の社風に合う人材かと思っていたら、合わない人材で双方が不満をためることになってしまった。

 

(入社者側が感じるミスマッチ)

  • 入社前に応募者が自分なりに得ていた情報と採用面接で聞いた話から抱いていたイメージと実際に入社してみた状況が違っていた(イメージと現実とのギャップ)
  • 入社前に聞いていた期待していた仕事内容と実際に従事する仕事内容が違っていた

 

いずれにしても、双方が期待していたものから外れたものがギャップとして生じるものが採用におけるミスマッチです。

 

大手転職サイトのエン・ジャパンが実施したアンケートによると、転職者の4人に1人が「思っていたものと違った」という入社後のミスマッチを感じている、という調査結果事例もあります。

このことからも、採用のミスマッチは多くの会社で発生していることが分かります。 

採用でのミスマッチが起こる要因

人事評価制度を採用の場面で活かすことを考える前に、そもそもなぜ採用のミスマッチが起こるのか?

そこには様々な原因がありますが、本質的な問題はお互いの「期待値とのギャップ」につきると言えます。

期待していたものが高ければ高いほど、現実も高いものが要求されます。

入社前の期待値と入社後のギャップはゼロにするのは難しいですが、いかにしてこの「入社後のギャップをなくす」かが、採用のミスマッチを解消することにおいては重要になってきます。

ではこの期待値とのギャップを生じる主な要素はどんな内容でしょうか?

弊社が考えるポイントは主に以下の点です。

・社風、カルチャー

・仕事内容

・給与体系、昇給、ボーナスの内容

・育成、教育制度

 

上記のいずれも、当然といえば当然ですが、ギャップを生む原因となります。

たとえば、社風やカルチャーでいえば、入社前には自由で風通しの良い社風と聞いていたのに、入社したら上下関係も厳しく、自由に意見を言えるような雰囲気がなかった。

仕事内容についていえば、専門的な仕事、クリエイティブな仕事内容に魅力を感じて入社したのに、入社後の配属で実際に任されるのは誰にでもできそうな単純作業になってしまった。

企業側にももちろん事情はありますが、こういったギャップ、あなたの会社ではありませんでしょうか?

これらのギャップの要因を掘り下げて考えてみると、次の2点に集約されます。

1、採用面接の場面では応募者も企業側もお互いに「いいかっこをしてしまう」こと。

2、入社までに会社が伝える情報が不足している(応募者側からすると、得られる情報が不足している)こと。

 

良い恰好をしてしまうのは当たり前です。

応募者としては、採用してほしいという思いがあるため、自分のことをいかに有能な人材であるかをPRします。

一方、優秀な人材が欲しい企業側も、自社が少しでも「いい会社」であるかをPRします。

そのPR合戦が採用の場であり、結果として多くの期待値とのギャップを生むことになります。

問題なのは、2点目の伝える情報が不足していることです。PRすることは採用面接の性質上、会社側ではコントロールもしにくい部分です。

一方、入社までに応募者にどういった情報を提供するかという点は、会社側でコントロールができます。

この応募者に伝える情報に、人事評価制度のエッセンスを取り入れる、ということが改善、解消の手段となります。

約8割の人が「入社後のギャップ」を感じた経験がある

ここで1つ、興味深いアンケート資料をご紹介します。

エン・ジャパン株式会社が2023年8月に実施した「就業前後のギャップ」に関する調査によれば、回答者の約79%が入社前後でギャップを感じた経験があった、という調査結果があります。

これらの入社後のギャップが原因で退職に至ったケースも多く、それらのギャップの内容としては、上位から順に、「職場の雰囲気」が最も多く、「仕事の内容」、「時給・給与」といった項目が続きました。

時給・給与がギャップというのはもはや虚偽広告の疑惑や給与に関する誤解があったということですが、トップの要因となった「職場の雰囲気」や「仕事の内容」は確かに曖昧な部分も多いため、実際にギャップが生じる要素となっているのでしょう。

では次に、入社前後のギャップを最小限に抑えるために、人事評価制度の活用を検討する道を見ていきましょう。

人事評価制度を採用選考に活用する

ここまで読まれた方はもうご理解いただいたと思いますが、期待値のギャップをなくし、採用でのミスマッチを解消するには、ストレートにたくさんの情報を提供することになります。

自社の状況を正直に書くと応募者が来ない・・・と考える会社側の気持ちもわかります。

しかし、情報不足や誤解があった状態で採用したとしても早期に退職、もしくはそのギャップが原因となりトラブルが発生する可能性を考えると、適切な情報提供をしていく必要があります。

人事評価制度を構築すれば、以下のような活用ができます。

 

1、求めるスキルレベル、評価される要素のすり合わせができる

企業が求めるスキルと応募者が求めるスキルが合っていないと、ギャップが生じてしまい、入社後お互いにとってマイナスになってしまいます。

中途採用者では、前職までの職務経歴を踏まえた期待値や前職での収入水準で給与水準が決定されることが多いです。

同じような職種、業界で働いていたとしても、求められるスキルレベルや業務範囲などは実はかなり会社によって変わります。

人事評価制度において、評価基準書があれば、採用面接の時点で、入社後の待遇、ポジションにより求められるレベルが明確になり、どういったレベルの仕事をすることが求められているのかが応募者に伝わりやすくなります。

 

2、「仕事の価値観」をすり合わせることができる

人事評価制度にはその会社の色が非常にでてきます。つまり、人事評価制度の中身を話すことで会社に合う人材なのかどうかの判断がしやすくなります。

人事評価制度の内容は、経営者・会社側が評価をしたい人材の中身が表現されています。言い換えれば、会社の価値観がわかります。

例えば、体育会系気質の上下関係が厳しい会社なのか、それとも、数字を第一に考えている成果主義の会社なのか、チームでの協力、犠牲新を大事にしている会社なのか、といったことがわかります。

評価制度の前提には、会社ごとの行動理念などもあります。

行動理念は会社が社員に行動する上で大切にして欲しい価値感になりますので、応募者としても自分に合う会社かどうかの判断がしやすくなります。

この部分の価値観は良い悪いといったものではなく、自分に合うかどうかというものです。

この価値観のマッチングを会社側が採用選考、面接の場のみでジャッジすることは困難と言えます。

そのため、応募者に価値観をヒアリングし確認するのではなく、会社側が積極的に情報を提供し、その提供された情報を元に応募者の方に「自分に合うかどうかをしっかりと吟味してもらい、納得してもらい入社することが非常に有効です。

 

3、育成、教育面でのギャップをなくすことができる

多くの人は、もっと成長したいという思いをもって、入社をしてきます。

人事評価制度の運用状況、上司の部下のフォロー、サポート方法や仕組みを聞くことで、応募者にどんな考えで人を育てているのかが伝わりやすくなります。

 

 このように、人事評価制度を採用シーンに活用することで、ギャップ、ミスマッチを極力少なくすることができます。

勇気をもってマイナスなことも伝える。

これが結果的に期待値とのギャップ、ミスマッチをなくす最善の策です。

企業側の心理として、採用したい気持ちが強くなるため、ネガティブな情報を提供するのは勇気がいります。

良いことばかりを伝えれば、応募者も増え、入社する人も増えるでしょう。

しかし、伝えるべき情報を隠してすぐに辞められてしまえば、結局マイナスです。

自社のカルチャーに合う人に入社してもらうには、必要な情報を正直に伝えることが、理にかなっています。

とはいえ、人事評価制度がなければ、必要な情報をうまく応募者に伝えることもできません。

  • この会社の業務品質、仕事のレベルどんな内容だろうか?
  • どんな人材が評価されるのか?
  • 育成や教育はどのように行われているのか?

 

応募者のこのような疑問に選考段階で伝えることができません。

結果として、認識のすり合わせが行われることなく、入社することになります。

人事評価制度は既存社員の成長や育成に大きな影響を与えるだけではなく、これから採用する新しい社員にとっても良い影響を及ぼすことが可能になります。

採用活動における情報開示の重要性~法改正による義務化も

企業の言いたくないダークサイド(悪い面)も伝える必要がある、とお伝えしてきましたが近年は、採用活動における情報開示の必要性も増してきている点についてもご紹介します。

特に、育児休業取得状況の公表義務化に関する法改正があり、企業はこれに対応する必要があります。

2023年4月1日施行の改正育児・介護休業法により、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業は、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられました。

具体的には、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」を公表する必要があります。

公表は、インターネットなど一般の方が閲覧できる方法で行い、前事業年度の終了後おおむね3か月以内に実施することが求められています。 

さらに、2025年4月1日からは、この公表義務の対象となる企業がさらに拡大され、常時雇用する労働者が300人を超える企業にも適用されることになります。

これにより、上場企業をはじめとした大企業だけではなく中堅企業でも対応が必要となります。 

情報の開示は上記の通り300人を超える企業となっていますが、応募をする若手世代の求職者にとっては、非常に気になっている点となってきています。

育児休業の取得率や取得実績、実際にどのぐらい取得しやすいのか、また、取得後復帰している先輩社員がどのように働いているのか、といったことは300人未満の中小企業に応募してくる若手世代にとっては重要な選考のポイントとなります。

実際に弊社のクライアント企業の人事担当者の方からも、採用面接の場において「育児休業」に関する質問を受けることが増えた、という声をよく聞くようになってきました。

これらのことから、企業規模の大小によらず、様々な情報を開示することで、求職者は企業の働き方をイメージし、入社後の働きやすさを判断しやすくなります。

あいまいでギャップが生じやすい言葉での「会社の雰囲気」よりも、実際の生の「実績」データは事実です。

職場環境の整備、法令遵守を徹底しているかが、良い人材を採用できるかに大きな影響がでる時代になってきています。

人事評価制度の導入、改善を社労士に相談

人事評価制度の導入や改善は、社員のモチベーション向上や組織の成長に不可欠です。

また、ここまでお伝えしてきた通り、自社に合った人事評価制度を導入し運用することで採用にも大きな力を発揮するようになります。

とはいえ、適切な人事評価基準の設定や運用には専門知識が求められます。社会保険労務士(社労士)は、労務管理のプロフェッショナルです。人事面だけではなく労務管理の専門家として、貴社に最適な評価制度の構築をサポートします。

人事評価制度の見直しや新規導入をお考えの際は、ぜひ弊社にご相談ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。

人事制度コンサルティングのご紹介

人事制度にご興味を持たれた方は以下のページもぜひご一読ください。

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