人事評価制度と目標管理(MBO)

目標管理(MBO)とは?

MBOとは、Management by Objectives and Self-controlの略で、目標管理と呼ばれるマネジメント手法です。

かの有名なドラッカーが自身の著書の中で提唱した組織マネジメントの手法であり、目標設定を軸に従業員の業績管理を行う手法です。

この手法では、従業員自身が上司と協力し、具体的かつ達成可能な目標を設定し、その進捗を定期的に評価します。MBOの特徴は、目標が事前に明確に定められているため、ゴールが見えやすく、目標が達成できたかどうかをみることで、成果がでたかどうかも評価がしやすい点です。

セルフコントロールの部分でいえば、従業員が自分の目標にコミットすることで、モチベーションの向上にも寄与します。MBOは組織の戦略目標と個人の業績をリンクさせ、成果に基づいた評価を実現するために用いられます。

 

  • 目標設定が重要な理由

MBOの導入を考えるうえで、そもそも目標設定が重要な理由について考えたいと思います。目標設定は、個人や組織が進むべき方向性を明確にし、成果を最大化するためです。明確な目標がなければ、日々の業務は漠然としたものになり、生産性や効率が低下する恐れがあります。目標があることで、個人やチームは何に集中すべきかを理解し、優先順位を正しく判断できます。

また、目標達成による達成感や自己成長を実感できるため、従業員のモチベーション向上にもつながります。組織全体としても、目標を共有することで一体感が生まれ、チーム全員が同じ方向を目指して動くことができます。

 

  • 目標設定のメリット

目標設定には、個人と組織の両方にとって多くのメリットがあります。個人にとっては、業務の優先順位が明確になり、集中力や効率が向上します。

また、目標を達成することで自己成長を実感し、次のステップへ進むための動機付けになります。組織にとっては、全社員が共通の目標に向かって動くことで、一体感や連携が強化され、全体のパフォーマンスが向上します。

さらに、目標の達成度に応じた評価や報酬制度を導入することで、モチベーションの維持・向上にも寄与します。

 

こういったメリットがありますので、目標管理制度(MBO)を導入することは会社にとっても、社員にとっても有意義と言えます。

MBOのポイント、注意点

MBOを効果的に運用するためには、いくつかのポイントに注意する必要があります。

まず、設定される目標は具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限であることが重要です。また、目標は会社の全体戦略と連動している必要があり、従業員の役割に合致していなければなりません。

注意点としては、目標が過度に高すぎると、達成困難になりモチベーションが低下するリスクがあることです。

逆に、簡単すぎる目標も成長の機会を奪うため、バランスが重要です。最後に、進捗の定期的な確認とフィードバックが欠かせません。
 

  • MBOの結果と人事評価

MBOの結果は、人事評価の重要な要素として活用されます。従業員が設定した目標の達成度が、ボーナスや昇進、昇給などの評価に直結することが一般的です。

しかし、単に目標が達成されたかどうかだけでなく、そのプロセスや困難にどう対処したかも評価されるべきポイントです。

また、MBOを適切に運用するためには、目標達成が不可能な外部要因があった場合など、柔軟な判断も必要です。人事評価とMBOを連携させることで、より客観的かつ透明性のある評価が実現します。

 

  • MBOとセルフコントロール

MBOは従業員にセルフコントロールの意識を高める働きかけをします。

セルフコントロールとは、自分の業務や目標達成に向けて自己管理する能力のことです。MBOでは、従業員が自身で目標を設定し、その進捗を定期的に自己評価することで、自律的に業務を進める力が養われます。このプロセスを通じて、従業員は自らの行動や結果に対して責任を持つようになり、長期的に見れば、組織全体の生産性向上にも寄与します。セルフコントロールの促進は、従業員の自己成長にも繋がります。

しかし、MBOを導入している会社で実際によくあるのが、この社員のセルフコントロールがなく、目標設定自体が上司から割り当てられて、本人の自主的な目標設定と目標達成に繋がっていない、というケースです。

こうなると、MBOでの目標=ノルマのようなイメージとなり、自己成長やモチベーションにも繋がらないことが予想されます。このあたりはMBOの注意点と言えます。

 

  • MBOとKPIの違い

MBOと似ているものに、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)があります。KPIも目標管理の手法ともいえますが、焦点が異なります。KPIは目標達成に必要なプロセスを明らかにし、中間地点でどの程度の状態であれば、最終数値を達成できるかを想定して、中間数値を計測します。目標に至るまでのプロセスを評価するための指標と言えます

人事評価制度における目標管理制度(MBO)の位置づけ

目標管理制度は、組織マネジメントの手法の1つであることは先に述べた通りですが、人事制度全体として考えると、目標管理での結果、いわば目標の達成という成果や達成率といった結果をどのように人事評価に反映していくか?という点が論点の1つとしてあります。

この「目標達成率」や目標達成によって得られた「成果」をどのように人事評価に反映させるかは、社員のモチベーションや公平な評価の実現に大きく影響します。

以下、目標管理制度の結果を人事評価に反映させる場合のポイントについてみていきたいと思います。

 

  • 目標達成率について

目標達成率は、社員が設定した目標に対してどの程度達成できたかを測る指標です。例えば、目標が「売上を20%増加させる」であった場合、実際の増加率が10%であれば、目標達成率は50%となります。このように、数値で具体的に達成度を示すことで、評価の基準が明確になります。

ただし、この達成率はもともとの目標が簡単な目標なのか、レベルの高いストレッチ目標であるかによってそもそもの達成への難易度も変わってきますので、一概に達成率が高ければいい、とも言えません。

 

  • 目標の重要度に応じたウエイト付け

すべての目標が同じ価値を持つわけではありません。例えば、企業全体の目標に直結する大きなプロジェクトと、個人のスキルアップを目指した小さな目標では、重視されるべきポイントが異なります。

目標管理制度においては、各目標に重要度に応じたウエイトを設定し、目標達成率が評価に与える影響を調整することが必要です。

たとえば、次のように目標に優先順位をつけてウエイトを設定するといったことも考えられます。

◆重要目標(会社全体の戦略に関わる):ウエイト50%

部門目標(部署やチームの目標):ウエイト30%

個人目標(自己成長や業務改善):ウエイト20%

このようにウエイトを設定することで、社員がどの目標に力を入れるべきかが明確になりますし、達成率に基づく評価の公平性も高まります。

 

  • 定量評価と定性評価のバランス

目標達成率は数値で表されるため、定量的な評価が中心になりますが、数字だけでなく定性的な評価も取り入れることも重要です。特に、目標達成に至る過程で見られた努力やチームワーク、創造性など、数値に表れにくい側面も評価に含めることで、社員のパフォーマンスをより総合的に判断できます。

目標達成率とこうした定性的な側面を組み合わせて評価することで、社員のパフォーマンスを多角的に見られるようになります。

 

  • 定期的なフィードバック、評価プロセスの透明性の確保

目標達成率を評価に反映する際には、定期的なフィードバックが非常に重要です。社員が目標達成に向けて取り組む過程で、上司から進捗に対するフィードバックを受けることで、モチベーションを維持し、必要に応じて目標やアプローチを修正することが可能になります。

例えば、四半期ごとに評価面談を実施し、目標達成状況を確認しながら、目標の見直しやサポートが必要かどうかを話し合う機会を設けます。これにより、評価の透明性が高まり、最終的な評価時に社員が納得しやすくなります。

目標管理において他のメンバーとの目標共有の是非

目標管理制度(MBO)制度を導入する場合において、他のメンバーの目標は共有、公開した方がいいのでしょうか?

各メンバーの目標を公表・共有することにはメリットとデメリットがあります。

メリットとしては、チーム内での透明性が高まり、協力や助け合いが促進される点が挙げられます。また、他者の目標を見ることで、自分の目標に刺激を受け、モチベーションが向上することもあります。

一方、デメリットとしては、プレッシャーを感じてしまうことや、目標の競争が不必要に激化するリスクがあることです。共有の範囲や方法については、チームや組織の文化に合わせて慎重に検討する必要があります。

弊社でご相談をうけるお客様の事例をみると、公表・共有するのが理想ではあるものの、あまりオープンにしている会社の方がまだ少なく、本人と評価者となる上司のみにクローズした状態が多いと言えます。

または、部署内に限ってオープンにしているといった公開範囲を限定している企業様もあります。

目標管理のサイクル

目標管理は、一度設定して終わりではなく、サイクル的に繰り返し進行するプロセスです。一般的な目標管理のサイクルは、目標設定、進捗確認、評価、フィードバック、次期目標設定という流れです。

まず、各メンバーが個別に目標を設定し、定期的に進捗を確認します。その後、評価の段階で、達成度やパフォーマンスが振り返られ、フィードバックが行われます。

このフィードバックを基に、次のサイクルで新たな目標が設定され、さらに成長を目指します。このサイクルを繰り返すことで、個人と組織のパフォーマンスが継続的に向上します。

一般的な会社ではこの目標管理のサイクルを人事評価の期間と合わせて1年間でまわしていくことが多いと思いますが、期初に立てた目標が状況の変化で期中に変わる、ということも多々あります。そのため、半年でサイクルを回すような企業も増えてきています。

目標管理制度(MBO)の導入やアレンジのご相談

目標管理制度の結果を人事評価に反映する際には、単に数値的な結果だけで判断するのではなく、目標の重要度や定性的な要素もバランスよく取り入れることが重要です。

また、定期的なフィードバックを通じて、社員が自分の目標に向けて適切に進めているかを確認し、評価のプロセスを透明にすることが成功の鍵となります。

  • 目標管理制度は既にあるけど、なかなかうまく機能していない
  • 目標管理制度はあるが、賃金や評価への反映をどうすればいいか迷っている
  • これから新たに目標管理制度を導入したい

こういった企業様は、ぜひ弊社に一度ご相談ください。

目標管理制度の構築や人事評価制度への反映といったことは、なかなか自社だけで対応することは大変です。

不安な点やサポートの希望があれば、ぜひ一度ご相談下さい。

人事評価制度コンサルティングのご紹介

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